平成狸合戦ぽんぽこ 紅の豚や耳をすませばとの意外な関係性
2017/05/12
2015年8月14日(金)から3週に渡り金曜ロードショーで巨匠・高畑勲監督の作品が年代順に放映される。
8月14日には『火垂るの墓』が、8月21日には『おもひでぽろぽろ』が、8月28日には『平成狸合戦ぽんぽこ』が放映されるわけだが、そのいずれも高畑勲監督を代表する名作だ。
だがジブリ作品といえば『風の谷のナウシカ』や『天空の城ラピュタ』など宮崎駿監督を思い浮かべる人の方が多く、高畑勲監督はどことなく影に隠れがちな印象を受ける。
そこでここでは放映前に軽くおさらいも兼ねて各作品を紹介していこうと思う。
今回は『平成狸合戦ぽんぽこ』
宮崎駿監督「豚の次は狸だ!」
『平成狸合戦ぽんぽこ』は1994年に公開された。
『火垂るの墓』や『おもひでぽろぽろ』には原作があったが、『平成狸合戦ぽんぽこ』は高畑勲監督が徳島県に伝わる「阿波狸合戦」を元に原作や脚本も手掛けている。
その制作の経緯というのは、スタジオジブリの前作『紅の豚』の劇場公開後に宮崎駿監督が「豚の次は狸だ!」と発言したのがきっかけだったという。
とはいえその内容は大きくかけ離れており、開発が進む多摩ニュータウン(多摩市)を舞台に、その一帯に住む狸たちが「化け学」を用いて自分の住処を守るというストーリーとなっている。
こういった内容の関係上、人間目線の物語ではなく狸目線の物語となっているが、都市開発によって発生する自然破壊について考えさせられる描写がたくさん存在する。
環境問題は劇場公開から21年経った現在でも重要視されている社会問題の一つだ。
高畑勲監督はそういった人の心に訴えかける描写を作品内に取り入れるのが非常に上手いと感心させられる。
『耳をすませば』との意外な関係性
そんな『平成狸合戦ぽんぽこ』だが、その翌年の1995年にスタジオジブリで制作された『耳をすませば』とも関係がある。
なんと『平成狸合戦ぽんぽこ』のエンドロールの背景と『耳をすませば』のオープニングシーンは同じなのだ!
調べてみると『平成狸合戦ぽんぽこ』の舞台が多摩ニュータウンであるのに対し、『耳をすませば』の舞台は多摩市となっている。
表現こそ違うが、これは同じ町を現していることは間違いない。
さらに『耳をすませば』で雫が作詞する「コンクリートロード」の歌詞が都市開発に抗う内容となっており、『平成狸合戦ぽんぽこ』と繋がっていることが伺える。
また『平成狸合戦ぽんぽこ』には『となりのトトロ』のトトロや『魔女の宅急便』のキキなど、他のジブリ作品のキャラクターがゲスト出演をしている。
注意深く見ればすぐに見つけることができるので、是非探してみよう!
スタジオジブリのお祭り作品
『平成狸合戦ぽんぽこ』で描かれているのは、人間社会とは違うユニークな狸の世界だ。
またそれまでのスタジオジブリ作品の要素も交えたお祭り的な作品となっている。
とはいえその物語は重く、人間のエゴによって住処を追われる狸たちの様子も描かれている。
今、こうして暮らしている裏で虐げられた動物たち。
普段、あまりそういったことを考えさせられる機会はないので、少し意識してみてみるのも良いかもしれない。
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