ルートダブル グランドエンディング後の感想 全ての伏線が重なりあう稀代の名作

2017/02/06

これまで3回に渡り感想・考察記事を書いてきた『ルートダブル -Before Crime * After Days-』ですが、とりあえず最後までプレイし終えたので総まとめの感想を述べます。

ネタバレなしの感想も一応は書きますけどここまでくると大したことは書けませんので、基本的にプレイ前の人は非推奨なプレイレポになりますのでご注意ください。

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ネタバレなし感想

最近でこそノベルゲームをプレイすることは少なくなりましたが、それでも通算200本はプレイしていると思います。

そんな筆者だからこそ声を大にして言いたい。

これほどまでに綺麗に伏線が回収しつくされたゲームは見たことがない!

『ルートダブル』というゲームはSF作品の中では非常にわかりやすいタイプだと思います。

BC能力というコミュニケーションや記憶に関するSF要素は出てきますが、おおざっぱに言えばそれ以外には現実と何ら変わらない世界で物語が進んでいきます。

脱出サスペンスという非日常ではありますが「√Before」のような日常も描かれ、緊迫感がある中で比較的マイルドな作りになっていると言えるでしょう。

さらに閉じ込められた状況の中で起きる様々な出来事が発生し、読み進めていく中で自然と推理させられる構成にもなっています。

そうして始まる解答編とも言うべき「√Double」では、読み手の疑問を余すところなく潰していきます。

ありとあらゆる些細な点に対して解答が用意されており、クリア後には何一つ疑問の残る余地がありません。

二転三転するシナリオは非常に魅力的であり、1つの物語としてみれば間違いなく完成された名作であることには間違いないでしょう。

しかし完成され過ぎているが故に二次創作性がなく、内容のクオリティの割に知名度が低いように感じられました。

万人がやっても楽しめるはずなのに、プレイ済みのユーザーが思いのほか少ない。

正に「隠れた名作」という評価がこれほど相応しい作品はないと言えるでしょう。

好みの程度には寄りますが、個人的には万人におすすめできる名作ノベルゲームであり、筆者がプレイしたノベルゲームの中でも十指に入る名作と言えるので、これを読んで興味を持った方は是非プレイしてみてください。

……とりあえずネタバレなしだとここまでが限界なので、早々にネタバレありの感想に移りたいと思います。

ネタバレあり感想

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というわけでここからはネタバレありの感想です。

今回は総まとめ的な意味合いもあるので、項目ごとにわけて今まで以上にがっつり書いていこうと思います。

広告の下はネタバレしかないので、ネタバレを嫌う方はブラウザバックをお願いします。

シナリオ

ネタバレなし感想でも言いましたが、とにかく伏線の回収と見せ方が素晴らしい。

回収された伏線がまた次の真実に対する伏線であり、そういった伏線探しをするために2周目をプレイするのも非常に楽しめると思います。

現に筆者はバッドエンドを回収しつつすべて読み返したのですが、その中で新たな事実を色々と見つけることができて現状すごく満足できています。

一例をあげるとするならば『ルートダブル』のメインヒロインである悠里の存在。

「√After」ではエンパシー能力を持つコミュニケーターの可能性が示唆され、「√Before」では予言めいた発言をしつつ、実は9年前に死んでいたことが判明します。

その後「√Current」ではBC能力による記憶操作が可能であるという事実が明かされ、悠里についての記憶が操作されている可能性に気づくことができます。

そして「√Double」では9年前に死んだと見せかけてラボに被検体として幽閉されていたという真実が明かされるという流れです。

これだけでも悠里の生死について二転三転しているのですが、この事実がさらに被験者Nが凪沙であることを示唆するヒントにもなってくるのです。

そんな伏線回収ゲームだからこそのグランドエンディングで明かされる最後の真実が重みを増し、またBC能力という設定との親和性が高かったように感じられました。

キャラクター

メインの9人はもちろんですが、それ以外も非常に魅力的なキャラクターばかりでした。

当初はまとめて語るつもりでしたが、1人ひとり語りたい衝動が抑えきれなかったので語らせてください。

  • 笠鷺 渡瀬
    ある時は正義に燃えるレスキュー隊、ある時は復讐を誓うテロリスト、そしてある時はヒールを演じながらも自分の信念を貫き通す主人公という、1人で3役もこなすハイブリットキャラクター。
    主人公としては明らかに夏彦の方が活躍しているのですが、人間的な魅力を感じより多くの感情移入をしたのは渡瀬の方でした。
    夏彦悠里を再会させたカササギであると同時に多くの女性の心を盗んだ泥棒カササギでもある。
    若さに任せて成長していく夏彦に対して、記憶操作を受けたとはいえ芯のぶれなかったその姿に男を感じました。
  • 天川 夏彦
    主人公の1人にして最強のBC能力者になってしまった少年。
    状況が切迫していたので仕方のないことかもしれないが、勝手に他者の記憶を見たり弄ったり壊したり、挙句の果てに共有するのはどうかと思う(笑)
    多くの女性の心を盗みつつもきちんと風見のところに落ち着いた渡瀬に対して「みんな大好きじゃ駄目かな?」と告げた夏彦は今回の事件を通して言うほど成長できていないのかもしれません(笑)
    というかヒロイン3人に好かれて優柔不断とか、典型的なラノベ系主人公そのものですね(^^;)
  • 琴乃 悠里
    脳内幼馴染だと思ったら実は生きてたメインヒロイン。
    夏彦を自由にするためとはいえ、自ら幽閉される道を選んだ彼女はけなげだけど大人び過ぎている印象も受けた。
    とはいえ夏彦や2歳年上であることを考えれば納得できる部分でもある。
    ちなみに幼少時代の悠里夏彦ましろとばかり遊んでいたようだけど、小学校では友達ができなかったのかね?
    正直なところ、同じ年の設定でも問題なかったような気がする。
  • 橘 風見
    レスキュー隊の副隊長にして色々な意味で悲劇のヒロイン。
    尊敬していた隊長であり彼氏である渡瀬はテロリスト、妹である凪沙は火災で死んだと見せかけ幽閉されて生きていたが、再開した時には結局死んでいた。
    挙句の果てに今回の事件でBC能力にも目覚めた結果、政府に追われる生活を強いられる羽目に。
    そんな薄幸系ヒロインを彷彿とさせる要素満載な風見ですが、その実態はギャップ萌えの宝庫であり、レスキュー隊初の女性隊員という有能っぷりを見せた後に見せる渡瀬に対するデレデレっぷりはもうたまりません。
    正直、悠里よりよっぽどヒロインしていたと思う。
  • 守部 洵
    レスキュー隊の新米で元気系のキャラなんだけど、周りの濃すぎるキャラに筆者の中では没個性と化していた。
    だからその分、エンジンカッターを持ち出した時のインパクトがヤバイ。
    悪意に支配されていたとはいえ、あんなん笑わずにはいられないだろ!!
    その一方で精神的な強さも見せてくれたキャラでもあり、いい味を出していたキャラではあるんだけど、どうしても周りの個性が強すぎて普段の印象はそこまで残りませんでした。
  • 椿山 恵那
    初登場シーンが一番インパクトの強かったBC警察さん。
    メタ推理が見事に的中したおかげで彼女が怪しいとは思っていなかったのだけど、まさかこうも予想通りだとちょっとがっかりかもしれない(笑)
    上司2人亡くしたとはいえ、優秀で心惹かれる後輩を得たり将来の部下候補のスカウトにも成功したりと、意外とちゃっかりしているように思えました。
    ちなみに『ルートダブル』では地味に唯一の眼鏡属性持ちのヒロインです。
  • 鳥羽 ましろ
    「√Before」でこそヒロインヒロインしていたけど、他のルートではすっかり空気だった彼女。
    とはいえ周りのインフレが凄まじいことを考えるとそれも仕方のないことかもしれませんが、密かに「√Double」では最後に彼女が適性Sになって何やかんやするのかと思っていただけに残念でなりません。
    たぶん彼女が一番輝いていたのはサリュに料理を振舞った瞬間だと思います。
    ちなみに筆者は夏彦×ましろ派です。
  • 三宮・ルイーズ・優衣(サリュ)
    とりあえず筆者が一番土下座しなきゃいけない子。
    黒幕だと考察したのはもちろんのこと、RAMシステム使うまでサリュも悪意に感染していると思っていました!
    だけど実際は夏彦ましろを心配するあまりの行動であり、感情を読むことが苦手であるが故に敵とみなした相手には容赦ないだけだったんですね。
    「√After」や「√Before」の序盤ではそうでもなかったのに、今では存在そのものが「なにこれかわいい」と思えてしまう。
    その一方でアリスの娘にしてラボで生まれたという登場キャラクターの中で一番ラボに密接な関わりを持っており、さらにはその記憶を悠里に書き換えられているなど非常に重要な役どころにいたキャラクターでもある。
    考察で色々とぶっ飛んだ方向性で考えすぎた結果、最終的に筆者が一番気に入ったキャラクターです。
  • 宇喜多 佳司
    実はいい人だったおっさん。
    渡瀬をテロリストに勧誘した張本人でもあるが、本人自体は正義のために行ったと最後まで信じて疑わなかった。
    それにも関わらず渡瀬と違って罪を償っている描写が少ないのに違和感を覚えた。
    ラボが悪事に手を染めていたとはいえ、国家施設を崩壊させるほどの事件を起こした人物がシャバで悠々自適に過ごしているのはどうかと思うんだ。
    むしろ悪意に支配されていた渡瀬の記憶に出てきた方の性格を想定していたため、ちょっと肩すかし感を覚えたキャラクターでもある。
  • 天川 美夜子
    息子である夏彦や部下である宇喜多に疑われるなど、何気に人間関係の構築が下手なキャラクターだったと思う。
    その分、被検体だった悠里サリュに対してはとても甘い面があるのだが、言っていることとやっていることがちぐはぐな印象を受けました。
    母性に溢れていることもわかるし、一人の力で被検体をどうこうするなどできないというのも仕方ないことというのはわかるけど、夏彦宇喜多に対する振舞いはもう少しどうにかならなかったのか?
    そういった印象を受けたため登場人物の中で唯一最後まで好きになれなかったキャラクターでもある。
  • 笠鷺 亘
    渡瀬の双子の姉であり、彼がレスキュー隊を目指し、そしてテロリストになった原因でもある彼女。
    そんな彼女ですが、実は謎が1つだけ残ってます。
    それは火災から7年後の病院跡で彼女の声をましろが聞いたという部分。
    強い思いは思念として残るという演出なのかもしれませんが、それが生かすことを示唆する描写がその後になかった以上、別にいらなかったんじゃないかなと思います。
    なおキャラクターとしては非常に好きな部類です。
  • 橘 凪沙
    とりあえず凪沙生存エンドはまだですか?
    風見の妹にして被験者N、そして怪物。
    美夜子の担当でなかったからこそ怪物化したと思うのだが、一歩間違っていれば凪沙ではなく悠里がこうなっていたんだと思うとぞっとする。
    そもそも凪沙を担当していた研究員たちってアリスを逃がした時に悪意に感染している可能性があるんですよね。
    そんな人たちが行う人体実験ということを考えると、髪の色が白くなってしまったのもうなずける。
    今回、筆者がプレイしたのはPC版なので追加シナリオはありませんが、追加シナリオで凪沙に関する何らかの追加要素があるらしいので機会があればそちらもプレイしてみたいところです。

他にも被験者Aことサリュの母親であるアリスや死亡したレスキュー隊員の2人や恵那の上司2人などもいますが、メインどころ書き終えたところで力尽きたので割愛します。

何にしても魅力的なキャラクターが揃っており、男キャラは格好良く、女キャラは可愛くを地でいくような作品です。

風見サリュなんかは下手なキャラゲーよりキャラゲーしてる感じなので、SF苦手な人でも十分楽しめる仕様になっていると言えるでしょう。

システム

大きな独自システムこそ「センシズ・シンパシィ・システム」「RAMシステム」のみですが、細かい部分にも非常にこだわりを感じたのでここもキャラクターの項と同様に詳しく紹介していきます。

  • センシズ・シンパシィ・システム
    『ルートダブル』の根幹を成すシステムであり、実質的な選択肢。
    キャラクターに対する心証によって行動が分岐するというのは非常に厄介で、プレイし始めた頃は主人公が思った通りに行動してくれなかったために大変であり、何度もバッドエンドを見る羽目になりました(笑)
    とはいえ1度グッドエンドを見れば、アンサーモードという分岐の答えを教えてくれるシステムが導入されるので、非常にプレイヤーに親切な設計をしていると思います。
  • RAMシステム
    端的に言えば夏彦がBC能力によって他人の過去を暴き、記憶を書き換えるという身も蓋もないシステム(笑)
    これによって一種の群像劇になるのですが、存在意義についてはそこまで感じられず、さらにかなりくどい部分もあったので不評も多かった模様。
    とはいえ記憶に住み着いた悪意を駆逐していくという行程はノベルゲームの中にゲーム性を入れようという製作者側の創意工夫がある程度は伝わってきました。
  • MAP機能
    閉じ込められたラボの中でプレイヤーたちが現在どこにいるかを表示してくれる非常に便利な機能です。
    一気に読み進めている分にはそこまで使用しなかったけれど、ロード後の現在状況を確認する上で非常に役に立ちました。
  • TIPS機能
    作中で出てくる用語についての辞書。
    雑学や背景、あらすじなどが書かれてあり、これだけを読んでも非常に面白い。
    特にグランドエンディング後に解放される各キャラクターについての解説は一度見ておくべきだと思います。
  • メッセージウインドウ
    あまりに細かすぎて気づきにくいのですが、ここにも製作者側の細かい演出が存在しています。
    『ルートダブル』にはリアルタイムを表すウインドウと記憶を見ているウインドウと改竄された記憶のウインドウと3種類存在し、さらに左上にはキャラクターごとの色が振り分けられており、誰の視点で物語を見ているのか一目でわかるようになっています。
    こういう細かい部分には非常に好感が持てるのも『ルートダブル』の魅力の1つです。
  • シーンタイトル
    渡瀬視点だと英語夏彦視点だと日本語で表記されています。
    なので「√Current」では英語と日本語の両方の表記がされているのですが、筆者はそこでこの事実に気づきました(笑)
    またRAMシステム中に各キャラクターの記憶を除いている時のシーンタイトルは、そのキャラクターに関連したテーマで統一されています。
    さらに言えば渡瀬側のヒロインが音楽夏彦側のヒロインが書籍と大きなくくりで共通したものとなっており、最終的に結ばれる渡瀬と風見に至ってはどちらもクラシックをモチーフとしたシーンタイトルになっているなど、本当に芸が細かいと思います。

とりあえずシステムについてはこんなところだと思います。

細かいところまで目を向けると製作者側のこだわりがとてもよく目につき、深いところまで作り込まれているんだなと感心させられました。

総括

サスペンス特有の緊迫感ミステリーをのような謎解き要素を併せ持ち、無理のないSF要素で味付けされた非常に面白い物語であると言えるでしょう。

上述の通り、偏執的なほどに伏線回収をしてきますが、それは物語が深く作り込まれている証拠であり、完結した物語としては極上のものと言えるでしょう。

その一方で完結しすぎているが故に発展性がなく、二次創作性を損なっているのが本作の最大にして唯一の欠点であると思います。

とはいえそれで損していると思えるのは知名度の面のみであり、実際にプレイしたプレイヤーからすれば極上のノベルゲームであることは間違いないでしょう。

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